2022年3月15日 • 所要時間:約7分

変化する仕事のパターンに空間をうまく適応させるには

物理的なワークプレイスは、個人作業からグループ活動までさまざまな新しい役割を担っている

by Marion Toison Flichy

ヘイワースは、パリオフィスの改装に着手したときには、数年前からすでに組織・デジタル・空間の変革に取り組んでいました。10年以上にわたり多目的スペースや不特定目的のワークステーションを研究開発した経験から、私たちは多くのことを学びました。近年の世界的なパンデミックは、私たちがすでに知っていたことを再考し、働き方の新しい課題を検討する機会をもたらしました。そして、自らにこう問いかけたのです。今日、オフィスに回帰するということはどのようなものになるのでしょうか。

アイデア発想法

ヘイワースのアイデア発想法は、パリオフィスのニーズに合ったデザイン概要を作成する上で、これまでと同様に適切かつ効果的であることが証明されました。再設計のプロセスでは、次のようないくつかの重要な要素がありました。

  • プロジェクトの課題について、全関係者の足並みをそろえること
  • 既存の文化と望まれる文化の分析
  • 従業員満足度と空間稼働率の測定
  • チーム内の活動範囲とその進化の評価
  • 従業員だけでなく、顧客、見込み客、建築家、パートナー、ディーラーもプロセスに巻き込み、多様な視点を得ること

私たちは、ワークプレイスの可能性を最大限に引き出すために、著名な建築家・デザイナーのPatricia Urquiolaに支援を依頼しました。そして数か月後、Urquiolaの意見を取り入れながら、パリの新ワークプレイスのオープンを祝い、完成までのプロセスをご覧いただく準備が整ったのです。

効果的なショールームとワークプレイスの設計

ワークプレイスのデザインやコンセプトは、従来のものから変化を遂げています。今日、私たちがオフィスを訪れるのは、自宅や別の場所にいても可能な個々人の仕事や取引よりも、グループ活動のためです。効果的なビジネススペースは、コラボレーション、社交、ホスピタリティを促進し、さらに従業員がいつどこでどのように働くかを自由に選択することも可能にします。

どこでも仕事ができるこの時代、ショールームでありワークプレイスでもあるパリの美しいビルは、人々が出会い、コラボレーションし、インスピレーションを得るための生きた舞台となります。それは、組織の成功という共通の目標に向かって働く場なのです。この考え方は劇団に似ており、
多くのコンピテンシーを結集する必要があります。

私たちは数社の企業と提携し、「ウェルビーイング」「柔軟さ」「デジタルテクノロジー」「持続可能性」という4本柱を基本に、包括的かつ先進的なオフィスデザインソリューションを構築しました。 

1本目の柱:ウェルビーイングと業務中のクオリティ・オブ・ライフ

ワークプレイスは、身体的、認知的、心理的な快適さを確保し、従業員のパフォーマンスや仕事の満足度に貢献するものです。ソリューションは、Ecophon、BuzziSpace、Citterioなどの音響機器、またArtemide 、Pablo Designsなどの照明を中心に開発しました。

生物親和的な空間デザインは従業員にとって必要不可欠なものです。なぜなら、自然の要素は集団としての健康、気分、創造性に良い影響を与えるからです。パリのスペースでは、デザインパートナーであるAmbiusとTanamanが、明るいフロアだけでなく、地下や暗いスペースにも対応できる特定の植物を選定しました。デザイン性の高いダイニングや休憩エリアでは、人々は互いに時間を共有したくなるものです。また、パートナーであるCastalie、Action Café、Room Saveursは、おいしく健康的で、持続可能な食品をたくさん提供するメニューを選びました。

各階には、人々がリラックスし、休息し、再充電できるようなスペースを用意しました。Patricia Urquiolaには、色と素材のパレットを意図的に取り入れることで、温かく心地よい雰囲気をデザインできるよう支援していただきました。この建物の歴史とアールデコ様式が従業員や訪問者にインスピレーションを与えるという、独自の美的な強みは誇らしいものです。
 

2本目の柱:柔軟さの必要性

働き方や組織、また、個人のニーズ・職業のニーズは常に変化し続けています。複雑で不確実な状況をどう切り抜けて行くかを知るたびに、私たちは実験とテストを何度も繰り返すことになります。私たちのパリのオフィスは固定的なスペースではなく、むしろますます適応性を高めています。この柔軟さによって、私たちは従業員の生活を制限するのではなく、より快適にすることができるのです。

パリオフィスのレイアウトコンセプトは、ワークステーションを固定しないダイナミックな活動型スペースの研究から生まれました。私たちはチームとのコラボレーションで10種類の活動を特定し、そのニーズに合わせた家具やデジタルソリューションを提供しました。例えば、すべての従業員は、リモートワークの装備を有しそれぞれの活動や好みに応じて働く場所を選ぶことができます。 

以前のレイアウトに比べ、ソーシャルスペースやイベントスペースも拡張されました。その中心は、温かくフレンドリーな出会いとカジュアルなミーティングができる広いスペースです。また、コラボレーションやクリエイティビティ、トレーニングのためのワークショップ型スペースを増やし、個々の通話やグループビデオ会議のためのプライバシーを守る小部屋やブースをいくつか設けています。 

リニューアル後のスペースでは、従来のミーティングスペースや個人用ワークプレイスの数を減らしました。その代わりに、スペースに多機能で適応性を持たせ、また利用予約ができるテクノロジーを採用しています。さまざまな規模のチームに対応するために組み合わせることができるスペースもあります。また、ショールームをパートナーに開放し、コワーキングスペースを提供することも可能にしています。パリのショールームは、その活力をさらに高め、ニーズに合わせて最適に適応する、応答性の高いオフィス空間を提供します。 

照明のパワーを活用

光あふれる空間を作るためのトレンド、考慮点、インスピレーションをご紹介します。

3本目の柱:デジタルアクセスの充実

パリオフィスの新しい業務環境は、実際のwork from anywhere(場所を問わない仕事のしかた)に基づいて構築されています。このモデルの成功はスペースの柔軟性と強力な組織文化に依るところが大きいですが、テクノロジーも重要な役割を担っています。

ハイブリッドワークは、適切なデジタルツールがなければ制約を受けかねません。私たちはSharing CloudとOpen My Spaceとの提携により、3つの目標に対応するデジタルソリューションを設定しました。

1.  従業員と訪問者の移動を容易にする
従業員による現場でのスケジュール設定、スペースの利用予約、訪問者のチェックイン、ビル内の移動、デジタルサイネージによるコミュニケーション、Izybatがデザインしたロッカーへのアクセス、PulseBoxによるスクリーン表示コンテンツのワイヤレス共有を可能にする。

2.  リモートユーザーと対面ユーザーの両方に最高のチームエクスペリエンスを提供
Logitechのソリューションにより、従業員のビデオ会議システム接続を容易にし、直感的使用を実現。バーチャル体験を向上させるとともに、Bluescapeによりインタラクティブ性とリモートコラボレーションの品質を向上させる。

3.  定期的にスペースをモニタリング
時間をかけて、従業員がどのように各スペースを使用しているかを把握し、稼働率を測定し、人々がどのようにスペースをダイナミックに変化させているかをリアルタイムで観察する。

テクノロジーは、ワークプレイスで個人間の制約や不平等を生み出すことなく快適性を提供するために使用することができま す。興味深い実験的な分野として、対面での参加者と遠隔地からの参加者のハイブリッドコラボレーションがあります。私たちは、研究と経験の中で、会議を改善するためには行動を適応させる必要性があることを見出しました。コラボレーションを成功させるためには、その手順を開発し、一緒に仕事をするためのより広範なガイドラインに統合する必要があります。

4本目の柱:社会的・環境的責任

ヘイワースは、環境・社会問題に積極的に取り組んでいます。私たちは世界をより良くするという共通の目的のもと、ビジネスの枠を超えて考えています。

パリの新オフィスとショールームを機に、私たちは持続可能で包括的な環境に対する私たちの行動を強化することを決定しました。そのために、日常的に使用するエネルギーや原材料の量を抑える選択をし、たとえば、雨漏りしない窓、海洋プラスチックを再利用したカーペットやファブリック、材料の再利用、照明や室温をコントロールできる機能などを取り入れています。

Emmaüs Movementとのパートナーシップでは、さらに一歩踏み込んで、「人にセカンドチャンスを、モノにセカンドライフを、地球により良い未来を」という3つのコンセプトを掲げています。

1.  Label Emmaüsとの協力でトレーニングや雇用創出によるインクルージョンを行い、製品に第2の人生を与えています。この取り組みは、ベストセラー製品のZodyから着手しました。Zodyの中古チェアは、Label Emmaüsによって再生され、再び市場に登場する予定です。

2.  また、工芸とデザインを通じてプロの再統合を目指す木工訓練校、Atelier Emmaüsには、新しいショールームの木工品、バーカウンター、カスタム食器棚、収納などの製作を依頼することで、その取り組みを具体化させました。

3.  さらに、社会的連帯経済(SSE)から革新的な家具を作るための、デザインコンクールを開始しました。このコンクールから、ヘイワース・フランスの標準製品群を補完する製品を売り込むとともに、Atelier Emmaüsにプロジェクトの委託を繰り返す機会を提供していきます。

これは始まりに過ぎません

パリオフィスのリノベーションは、まだ始まったばかりの冒険です。私たちは、ワークプレイスは、そこで働く人や訪れる人のことを考え、目的を持ってデザインされることで、付加価値を生み出すことができると考えています。    

これからのワークプレイスとは、人々がコラボレーションし、交流し、成長するための主要な拠点となるものです。そして、従業員のエンゲージメントとコミットメントを高める強力な組織文化の基盤となります。ウェルビーイング、柔軟さ、テクノロジー、持続可能性を考慮したデザインによって、ワークプレイスはあらゆる組織の中心的な存在となるのです。

世界のヘイワース

グローバル本社をはじめ、ブダペスト、ドバイ、ロンドンなどのショールームやオフィスで、インスピレーションやデザイン事例をご覧いただけます。オープンオフィス環境におけるカジュアルなミーティングスペースの活用や、スペースの適応性と柔軟性のパワーにご注目ください。

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