2021年7月1日 • 所要時間:約6分

HPTのための空間を活用する方法

リアル、バーチャルの両方でチームを中心に据えたワークスプレイスを創る

by Kristin Reddick

ハイブリッドワークの複雑さへの対応において、コラボレーション体験への平等なアクセスがこれまでになく重要になっています。業務遂行に必要なツールと空間をHPTに与えることは、コラボレーション、創造、イノベーションの能力を発揮するために不可欠です。このため、物理的環境、バーチャル環境の両方に高いインパクトを持った空間が存在しなくてはなりません。そして、対面での作業とリモートワークのためのアナログとデジタルの共有(情報交換)を一体化します。

従業員が適切なコラボレーションテクノロジーと、テクノロジーの活用を可能とし、チームのニーズに適したワークプレイスの両方にアクセスできる未来が想定されます。どのような作業をいつ、どこでするかはチームごとに異なります。

組織は、チームを支援するリソースと空間の適切なブレンドをどのように特定できるでしょう? それは、組織、機能の限界と地理的な境界を理解することからはじまります。限界はチームのリソースや活動を妨げることがありますが、これらを保護することもあります。

組織の限界
研究により、Competing Values Frameworkに基づく組織文化の類型に関する4つのコラボレーションモードが存在することが示されています。チームのコラボレーションモードを冷静に理解することで、空間の特性と毎日の作業を支援するために必要となるツールを容易に特定できます。 

チームに最適なコラボレーションモードは?
HPTの場合、コラボレーションの各モードが同じ規模で生じる可能性が高いのですが、各チームにはその中核となるサブカルチャーも存在します。それは、すなわち、成功に欠かせない中核的なコラボレーションモードです。  

伝達:これは、支配文化で好まれるコラボレーションモードです。  この文化には本質的に階層があり、複数の管理階級が存在します。  支配文化では、多くの場合、情報は所定のミーティングや正式なプレゼンテーションで伝達されます。 

実行:これは競争文化で好まれるコラボレーションモードです。  この文化を構成する人びとは、迅速にタスクを完了することを原動力としています。そして、空間は共有のツールと作業への便利なアクセスを提供し、迅速な達成を支援する必要があります。 

思考:これは、クリエイティブ分野で好まれるコラボレーションモードです。クリエイティブ分野に携わる人びとは、リスクを請け負って大きなアイデアに注力します。そして、俊敏に行動する傾向が見られます。ワークプレイスは、創造的な課題の解決に適するようデザインされるべきで、アイデアの共有を促進する柔軟な什器を装備しなくてはなりません。 

接続:これはコラボレーション文化で好まれるコラボレーションモードです。コラボレーション文化を構成する人びとは、グループ作業の価値を強調し、体現します。よって、柔軟性ある什器を備え、さまざまなアクティビティに対応したグループの空間がよく用いられます。 

組織文化の種別と、該当するコラボレーションモードを理解することはHPTを支援するためのすぐれたスタートポイントと言うことができます。一方で、チームの細かい達成規準(さらに、主なコラボレーションモードで対応していないタスクへの配慮)は副次的な空間で対応すべきです。 

各チームに最適なプライバシーレベルとは?
コラボレーションモードに加え、チームとメンバーはさまざまなレベルのプライバシーを要求します。仕事の機密、チームの特定ツールの使用、チーム外とのコラボレーションの必要は、チームの物理的なワークプレイスへの他者の出入りや、バーチャルミーティング、ツールへのアクセスに影響します。 

チームの物理的な障壁としては、完全に開放されたワークプレイスから、チームへの視覚と聴覚によるアクセスを制御し、雑音を遮断し、プライバシーと秘密を守るエンクロージャーまで、さまざまなものがあります。空間のプライバシーに加えて、チームへのアクセスの可能性に影響する変数として隣接の度合いがあります。ワークプレイス間の距離が近いほど、外部との交流の機会がより多く与えられることは当然といえます。 

チームが組織の他の人々からの定期的な入力を必要としない機密情報を扱っている場合、最適なワークプレイスは完全に囲われ、施錠可能で、その他の日常的業務の場所から離れた空間だと言えます。

作業の種類にあまり制限がないチームであって、ときどきの混乱に対応できる場合は、よりオープンなコンセプトで他者との間隔が近い場所に配置する事ができるでしょう。  

チームメンバーが最も力を発揮できる方法に加えて、チームのプライバシーニーズを理解すれば、ワークプレイスのレイアウトと機能、そして、チームが作業で必要とするテクノロジーのツールも特定することができます。   

機能の限界
機能の限界は、チームに関連する「人物」と「期間」に注目します。チームメンバーは、固定され、所属が明確に決まっていることもありますし、流動的で、機能を横断した設定になることもあります。 

チームには誰が所属していますか?
チームのワークプレイスに訪問者が近づくとき、誰が空間に帰属しているのかが明確にならなくてはいけません。チームは、ブランディング(個人またはチームのアーチファクト、サイネージ、仕上げの変更、オリエンテーション、ワークステーションのレイアウトの変更など)、チーム特有のツール(イーゼル、モニター、その他のワークツールなど)、収納(個別の収納、チームが共有する収納など)を活用してこのことを達成できます。  

チームワークの機能期間 
チームワークがどれほどの期間続くのかを理解することで、家具、什器や機器の配置の維持期間を評価できます。そして、それが固定的なものなのか、それとも柔軟なものなのか判断することができます。 

メンバーが(全員一緒でなくとも)一度に複数のプロジェクトに取り組み、ある程度所属が安定している場合は、典型的なワークステーションクラスターのような配置を採用した空間を選ぶことができます。そして、周囲のワークプレイスは短期的なコラボレーションのニーズに対応します。チームのワークプレイス内で個人の領域を確定するために共有の収納を活用できます。または、それを各自のワークステーションと一体化することもできます。チームが短期的に機材を使用する場合(ミーティングで大きな画面を使用する場合など)は、チームの領域外にある、アクセスが容易で、共有されたワークプレイスにそのツールを配置することができます。

より流動的な、機能横断型のチームは、多くの場合、単発のプロジェクトやタスクのために招集されます。達成すべき目標はひとつだけであり、それを達成するとメンバーは他のチームやプロジェクトに移行します。本質的に流動性があるチームですが、その任務の期間中は、変化するチームの規模に対応した空間として、専用の領域や部屋が必要です。その空間の内部に装備される什器と機器は、柔軟性に即したものでなくてはなりません。それらを使用するチームが、特定のニーズのために空間の機能を調整できるようにする必要があります。 

 

地理的な境界
地理的な境界は、チームの「場所」と「時期」に関する制限です。  

チームはどこで一日を過ごすのか? 
最近は多くのチームのメンバーがオフィス、自宅、サードプレイスに分散しており、チームの「場所」は特に重要です。共有物理空間はチームメンバーが相互に、瞬時にアクセスできる環境を与えます。加えて、チームワークに必要なツールへのアクセスを与えます。交流のきっかけが豊富に与えられ、類似性や意味をより簡単に特定でき、作業に特化したツールを使用できることで、強力な同期交流を促進します。好むと好まざるとにかかわらず、チームメンバー同士の距離が近いほど、より多くの同期交流が発生します。チームメンバー同士の距離が遠ければ、非同期交流が多くなります。  

チームはいつ作業を行うのか? 
タイミングは、チーム内の同期活動と非同期活動の頻度と長さによって決まります。チームが分散すると、コラボレーションテクノロジーの役割はさらに重要になります。そして、プロジェクト期間の大部分で、チームが集まる必要がない場合は、建物にチームのために固定空間を特設する必要はないかもしれません。柔軟性をもった什器を備え、必要なテクノロジーにアクセスできる共有の部屋が、同一の場所に集まったチームのニーズに対応するでしょう。 

コラボレーションのテクノロジーは進化を続け、その使用においてさらなる没入感を与えています。組織には、遠距離を超えて協力し合うチームが存在しています。これらのことに伴い、分散されたチームワークは引き続き改善されていくでしょう。しかし、多くのチーム活動において、同じ拠点での作業や、空間を共有した作業が引き続き最も有効となっています。 

組織の限界、機能の限界と地理的な境界に基づいてチームとその仕事を評価することが重要です。コラボレーションモード、プライバシーのニーズとチームの機能を理解することは、ダイナミックな空間の開発に役立ち、また、チームの複雑さとグループのニーズに適合したツールを採り入れるのに役立ちます。  

 

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