2022年12月13日 • 所要時間:約5分

デザイナーの人生 - もうひとつの側面

時として最高の曲はB面にあります。

by Alex Przybyla

セバスチャン・ヘルクナーは、オッフェンバッハを拠点に活動するドイツ人デザイナーです。

CappelliniのLitosソファとTeloラウンジを手掛けました。

この対談は、2022年10月ケルンで行われました。

時として最高の曲はB面にあります。

タイトル曲は注目を集めます。大衆受けする曲であり、電波を支配する曲です。しかし、驚きや実験、楽しみがあるのはレコードの裏面というのはよくあることです。アーティストは裏面で遊ぶことができます。

セバスチャン・ヘルクナーの作品は、B面集と言えるかもしれません。彼のポートフォリオは確かに大衆受けするものです。2019年にはMaison&Objet、2021年にはEDIDでデザイナー・オブ・ザ・イヤーと、数十のデザイン賞を受賞しました。他方で、彼の作品には恐れやためらいのないアーティストの遊び心に溢れています。ヘルクナーの作品では、実験的な要素は隠されるのではなく、前面に打ち出されています。

ジャンルにとらわれないミュージシャン同様、ヘルクナーは実に多種多彩の業界向けに製品をデザインしてきました。彼のポートフォリオには、コーヒーテーブルからチェア、ラグ、ワイングラスまで、あらゆるものがあります。デザインした製品は非常に広範であるにもかかわらず、そこには一貫してひとつのテーマが流れています。旅から受けた影響です。

小さな街角に隠れている宝物の求めて

ヘルクナーの作品は瞬間、瞬間で溢れています。彼のポートフォリオに溢れる旅のスナップショット。彼が体験したことが新しく、具体的な形で再現されています。サレントのゴツゴツした海岸線、コロンビアのカラフルなハンモック模様、ベネトの伝統的な吹きガラス技法、西アフリカの鳥の羽毛など、国内外を旅した時の生き生きとした光景が、彼のデザインのあらゆるところに織り込まれています。

どこへ行っても、ヘルクナーは人々が題材と対話する様子に特別な注意を払っています。彼の作品の多くには人の手が触れた感触が存在し、しばしば、そうしたハンドメイドの要素は彼の旅と直接繋がっています。彼は、職人がチーク材を曲げたり、枝編み細工をしたり、木型を使ってガラス細工をしたりする方法だけでなく、料理の方法、演奏の方法、仕事の仕方にも目を向けています。ヘルクナーは、「旅は最高です。そしてまた、他の国や文化で働くことは特権です」と述べています。「世界中の人々と触れ合うことは旅の最高の贈り物、最高のインスピレーションの源と思います。」

もちろん、ますます相互接続が進む世界では、地域に特有な要素は薄れています。どこの大通りも似たり寄ったりになっています。ヘルクナーは、「都市の外観はますます似た感じになっています。お店は同じであり、残念なことです」と嘆いています。

しかし、このことはもはや求められるインスピレーションがなくなったということではありません。ただ単に、宝物が少し目に見えにくくなっているということです。「必ず街を隈なく探ってオリジナルなものを探す必要があります。昔のLPレコードであったように、ためにA面のメインの曲よりもB面の方に優れた楽曲があることがあります。」

There’s a team behind, which is really important – always – to mention. It’s not just me!

Sebastian Herkner

奇妙な組み合わせと急成長

ヘルクナーの作品の驚きは、創造的な組み合わせから生まれています。めったに組み合わされることのない題材を組み合わせることをためらいません。それらの組み合わせには遊び心、私たちの予想を覆すものがあります。この作風の著名な例としてはBellテーブルがあげられるでしょう。普通は壊れやすさや繊細さを連想させるガラス細工によってテーブルの頑丈な土台が作られています。CappelliniのためにデザインしたLitos ソファでは、ソフトで心地よいソファの形にサレントの海岸線の荒々しさやゴツゴツ感が反映されています。

奇妙な組み合わせというテーマは、ヘルクナーのデザインに存在するだけではありません。彼の自宅には、「多数のビンテージ作品が揃っています。60年代のデザインで有名なものも、無名のものもあります。」 それら「有名なものと無名のもの」のビンテージ作品の中に、彼自身がデザインしたものを含めて、最近の作品が散らばっています。「派手なデザインの中心地ではない」とヘルクナーが笑いながら話す街、オッフェンバッハを拠点とする彼と彼のデザインチームは、国際的に認知され、名誉ある賞を相次いで獲得する製品をデザインしています。

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ヘルクナーのデザインスタジオは急成長しました。「16年前の創立当時、私はBellテーブルなど、最初となる製品のデザインを実際にキッチンテーブルでスケッチしていました」と回想しています。「当時はまだ一人でしたが、今では中国、台湾、スイス、フランスから集まった8人でチームを構成しています。つまり、オッフェンバッハのデザインチームは本当に国際的なチームということです。」 ヘルクナーが称える言葉を彼のチームに送るようにしています。「支えてくれるチームがある。本当に大切なこと、忘れてはいけないこと。私一人だけじゃない。」

もちろん、スタジオが成長し続け、プロジェクトがますます増えるにつれて、チームも拡大する必要があります。ヘルクナーは、最も最近の増員について話すことを特に喜ばしく思っているようです。彼は「今年は、私の夫が会社の一員になりました」と笑いながら語っています。「今やファミリービジネスということです。」

ヘルクナーと彼のチームは、常に長期的なパートナーシップを築くことを目指しています。「パートナーシップは関係ということです。ひとつの製品に留まりたくはありません。共に成長したい、創造したい、会社のポートフォリオの一員でありたいと願っています。」

You always need to find the small streets to find some originals - like sometimes with a record in the past, the back side had the better track than the main one on the front.

Sebastian Herkner

セバスチャン・ヘルクナーは、題材とアイデアを組み合わせて驚きと楽しさを生みます。彼の作品は人のタッチを大切にしています。ヘルクナーのデザインプロセスでは、世界中の人々の瞬間の印象的なシーンが蒸留され、そのシーンが椅子やテーブル、パターンやラグの形で新たに蘇ります。

ヘルクナーのポートフォリオには、B面に期待される実験・遊びのすべてがあります。彼のインスピレーションは予想していなかった方向からやってきて、驚くべき形で浮かび上がります。それらが小さな街角で見つけられた宝物です。しばしば最高のものがある隠れた楽曲は、探す場所を心得ていれば、誰でも見つけることができます。

セバスチャン・ヘルクナーのフルインタビューを視聴する

今日はセバスチャン・ヘルクナーをお迎えして、彼のストーリーとデザインアプローチのことを語ってもらいました。高い評価を受けているデザイナーとのフルインタビューをご覧ください。

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