手話に関するFAQ

  • ポーランド語の手話はどのようなものですか?

    ポーランド語の手話はどのようなものですか?

    Mikomaxの従業員はポーランド手話(PJM)を使っています。ポーランドの話し言葉とは異なると共に、とても面白い歴史があります。ポーランドのウッチにある私たちのチームには数十人のPJMスピーカーがいるため、ヘイワースではPJMは特に重要です。Mikomaxには30年以上、聴覚障害者の従業員がいます。

    PJMでは、18世紀のパリの聴覚障害者コミュニティで普及していた謎めいた言語、古フランス手話(VLSF)に基づく「独特の片手手話アルファベット」が採用されているようです。現在その記録はほとんど残っていませんが、VLSFは現代フランス手話にルーツがあり、アメリカ手話、ブラジル手話、ロシア手話など、世界中の他の多くの手話に影響を与えました。

    ポーランド手話は、古今のフランス手話と結びついているだけではありません。ポーランド手話はロシア手話やドイツ手話にも関係していると思われます。このことは一部にはフランスとの一般的なつながりが原因であり、また一部には100年以上ポーランドが地図から消えていた分割の時代が原因です。

  • 手話は「話す」ものでしょうか?

    手話は「話す」ものでしょうか?

    調べていた時、私は手話でのコミュニケーションを表す言葉として「話す(speak)」、「使う(use)」、「手話をする(sign)」という動詞に出会いました。選ばれる動詞は個人やコミュニティによって異なるようですが、これについては現在も議論があり、それぞれの動詞には意味合いがあります。

    聴覚障害者コミュニティの一部の人にとって、「話す」という動詞を使うことは、手話が口頭言語と「異なる」ものではないという主張になります。過去には、この認識が排除や弊害の原因になりました。

    何人かの人の話では、オンラインフォーラムのライターからは「話す」が好まれていることに気づきました。手話に関わるさまざまな情報源を見ると、別の傾向が混在していることがわかりました。

    ・ イギリスのセントラル・ランカシャー大学の手話教授Ulrike Zeshanは、その著書『Sign Language in Indo-Pakistan』の中で、手話でコミュニケーションする人々を表すのに「話し手(speaker)」という言葉を使っています。

    Singapore Association for the Deafの人たちはよく「使う」や「使い手」と書き表しています。この協会のFAQはシンガポールの手話に関する優れた情報源になっています。

    ・イギリスの慈善団体、SignHealthは、イギリス手話を「使う」人たちと書き表しています。

    Zeshan氏、シンガポールおよびイギリスの団体に倣い、大体においてこの記事では「使う」または「話す」を優先しています。

  • 手話は世界共通でしょうか?

    手話は世界共通でしょうか?

    いいえ。世界共通の手話はありません。ルーツが同じことはよくありますが、話し言葉同様、一般には手話言語には相互に理解できることはなく、世界共通ではありません。また、話し言葉同様、通常、手話は国や地域と結びついています。

    簡単に言えば、ドイツ語と中国語の話し手がお互いを理解できないように、ドイツ手話と中国手話の話し手はお互いを理解できません。(現実はもう少し複雑です。詳しくは次の質問で説明していきます)。

  • 「deaf」の先頭は大文字にすべきでしょうか? 小文字で書くときと先頭大文字で書くときにはどのような違いがあるのでしょうか?

    「deaf」の先頭は大文字にすべきでしょうか? 小文字で書くときと先頭大文字で書くときにはどのような違いがあるのでしょうか?

    筆者注:この質問は英語の使用を前提にしています。

    イギリスの聴覚障害者の健康慈善団体、SignHealthのこの回答は優れた情報を提供しています。SignHealthは、生涯の聴覚障害者である人たちを表すのに、大文字のDを使用しています。そのつながりで、SignHealthは「hard of hearing」や「hearing impaired」の用法も説明しており、一読の価値があります。SignHealthは、他の場所で次のように書いています。「大文字「D」の「Deaf」を使用する目的は、SignHealthの活動の中心は引き続きイギリス手話を使用する聴覚障害者に寄り添う存在であり続けることを示すことにあり、そうすることで聴覚障害者とその文化を尊重することを伝えています。」

    Singapore Association for the Deafはたいてい大文字のDを使用しています。その一例は、Deaf Culture and Communityページで見ることができます。

    上記の2つの例に倣い、この記事ではたいてい大文字のDを使用します(元の記事は英語で書かれていますが、他の言語では異なるアプローチがあると思われます)。

  • 2つの異なる手話の話し手はお互いに理解しあえるでしょうか?

    2つの異なる手話の話し手はお互いに理解しあえるでしょうか?

    手話は世界共通ではありません。一般に、同じルーツを持つ手話であっても相互理解はできません。また、同じ手話グループであっても、複数の体系や方言が存在することがあります。話し言葉同様、手話にもしばしば地域差があります。

    世界の多くの手話の間に共通のルーツがあります。例えば、ポーランドの手話とアメリカの手話は相互に理解できるわけではありませんが、共にいくつかの点でフランスの手話とつながりがあるようです。古フランス手話の記録はほとんど残っていませんが、現在使われている多くの手話と興味深いつながりがあると思われます。

  • 世界各国で使用されている手話にはどのようなものがありますか??

    世界各国で使用されている手話にはどのようなものがありますか??

    以下は、世界各地の手話を俯瞰したものです。地域別にアルファベット順にまとめています。読者の多くがいる国々をカバーすることを目的としており、すべてを網羅しているわけではありません。(ニカラグアは例外ではないかと思われるかもしれませんが、後述するように、ここに含めるそれなりの理由があります。)

    他にも魅力的な手話は数多くあります。お住まいの地域で最も一般的な手話はどれでしょうか?

ブラジル

ブラジルで最も有力な手話はLibras(LSB)です。フランスやポルトガルの手話とつながりがあります。

メキシコ

メキシコで最も有力な手話はメキシコ手話(LSM)です。このFAQの多くのケースで見られるように、LSMは、相互理解が可能というわけではありませんが、フランス手話やアメリカ手話とつながりがあります。構造的には、LSMは話し言葉のスペイン語とかなり異なります。LSMはまた別の言語であり、謎めいた古フランス手話につながりがあると考えられています。

ニカラグア

ニカラグア手話(ISN)は魅力的です。(このFAQでは魅力的という言葉をよく使いますが、その言葉はこの手話に特に当てはまります。) ISNは1980年代にニカラグアのいくつかの学校で、聴覚障害者の子どもたちの間で自然発生的に発展した手話であり、言語学者にとっては特に興味深い手話です。この時期、聴覚障害児のための最初の学校が設立され、このコミュニティは新しい言語の誕生の「豊かな地盤」になりました。

米国/カナダ

米国およびカナダの英語圏の大半で使用されているのは、アメリカ手話(ASL)です。(カナダのケベックではケベック手話が使われています。)ASLは西アフリカ(ナイジェリア、ガーナなど)、カリブ海諸国東南アジアの手話に影響を与えてきました。多くの手話で見られるように、一般にASLはイギリスやオーストラリアなど他の口語英語圏の手話と相互の理解はできません。手話の地域差の一例として、ウィキペディアのページに興味深い一節があります。「傾向として、南半球の人々の手話には動作に流れるようで、ゆったり感がある。これに対しニューヨークネイティブの手話は、比較的動きが性急と報告されている。カリフォルニアネイティブの手話もまた動きが速いと報告されている。」

オーストラリア

オーストラリアではAuslanが使われています。Auslanはイギリスオーストラリアニュージーランド手話(BANZSL)の言語系であり、アイルランド手話やアメリカ手話とも関係があります。

ニュージーランド

ニュージーランドで主流の手話はニュージーランド手話(NZSL、Maori te reo Turi)です。NZSLはBANZSL系であり、BSLと「62.5%の類似性」があります。

中国

中国本土には2つの手話方言があります。

中国南方手話はフランス手話の影響を受けており、上海のフランス人カトリック宣教師によって設立された学校で生まれました。「上海手話」と呼ばれることもあります。

中国北方手話はアメリカ手話の影響を受けており、煙台にある学校で生まれました。CSLはまた、イギリス手話とも興味深い共通点があります。

香港

香港マカオで使われている香港手話は、もともとは中国南方手話をベースにしていたが、現在は中国手話から独立した相互理解が不可能な言語になっています。

日本

日本日本手話は「話し言葉と異なりますが、その影響を受けています」。日本手話の系統には韓国手話と台湾手話もあります。

インドネシア

インドネシア手話(BISINDO)とは、インドネシアで使用されている手話のグループを意味します。グループ間は必ずしも相互理解ができません。ジャカルタ手話方言とジョグジャカルタ手話方言は「同じ系統」ではありますが、「文法的に異なり、分岐したものであることは明らかです」。

マレーシア

マレーシア手話(BIM)は2008年から公式に認められた手話であり、内容は州によって異なります。

シンガポール

シンガポール手話(SgSL)はシンガポールと同じぐらい多様であり、このリストで最も魅力的な手話の一つです。SgSLは「上海手話、アメリカ手話、Signing Exact English、地元で発展した手話の影響を受けています」。

南アジア

インドおよびパキスタンでは、インド・パキスタン手話が使われています。「2021年現在、インド・パキスタン手話は世界で最も使われている手話です。」

韓国

韓国手話は日本手話の系統であり。韓国手話は、話し言葉の韓国語と共に韓国の2つの公用語の一つです。

フィリピン

フィリピン手話(FSL)はアメリカ手話の影響を受けていますが、現在はいくつかの重要な点で異なります。FSLはフィリピンの多くの島々の間で地域的に異なる可能性があります。 

台湾

台湾手話も日本手話の系統であり、中国手話や香港手話とは明確に異なります。

タイ

タイ手話(TSL)はアメリカ手話の系統です。

フランス語

フランス手話(LSF)には豊かな歴史があり、ポーランド、アメリカ、ロシア、中国南方、ブラジル、アイルランド、オランダなど、世界中の手話に影響を及ぼしています。LSFの設計者であるシャルル=ミシェル・ド・レペは「聴覚障害者の父」と呼ばれています。偶然に2人の若い聴覚障害の姉妹と出会ったレペは、手話を教えることに身を捧げ、1760年に世界で初めて聴覚障害者のための無料の学校を設立しました。世界中の手話教育が彼の業績の影響を受けています。

ドイツ

ドイツではドイツ手話(DGS)が使われています。手話が話し言葉とがどの程度異なるかを示す一例として、DGSのウィキペディアページからの一節を紹介しましょう。「話し言葉のドイツ語では主語-動詞-目的語の文型で文が作られるのに対し、ドイツ手話では主語-目的語-動詞の文型が用いられる。」

ハンガリー

ハンガリーの手話には「7つの方言」があります。2020年からは試験で「話し言葉」と同等の地位を与えられ、聴覚障害児にとってはアクセスしやすく、また包摂性の拡大になっています。

アイルランド

アイルランドでは、アイルランド手話(ISL)が使われています。(北アイルランドではISLと共にBSLも使われています。) 興味深いことに、ISLは「BSLよりもフランス手話(LSF)に近い」手話です。

イタリア

イタリアの聴覚障害者によって主に使用されているのはイタリア手話(LIS)です。LISのページの歴史のセクションは一読の価値があります。ユスティニアヌス皇帝(西暦527~565年)の下でのベネディクト会修道士(口唇沈黙の誓いで知られる)の自然発生的な手話や、聴覚障害者の認知のことが取り上げられています。

オランダ

オランダ手話(NGT)は、古フランス手話につながるさらにもう一つの手話です。オランダには聴覚障害者のための学校が5校あります。

ポーランド

この連載で取り上げたポーランド手話(PJM)は、フランス手話とつながりがあると思われ、ポーランドの話し言葉と異なります。

ポーランド

ポルトガルで主流のポルトガル手話(LGP)は、スウェーデンのパー・アロン・ボルグ教授の業績によりスウェーデン手話の影響を受けている手話です。

ロシア

ロシアの聴覚障害者コミュニティではロシア手話(RSL)が使われています。ロシア手話はフランス手話とつながりがあるようで、おそらくこれはロシアで最初に手話を教えた2人のうちの1人がフランス出身者であったためでしょう。 

スペイン

スペインで主流の手話はスペイン手話(LSE)です。ただし、カタルーニャやバレンシアなどの手話もいくつかあり、それぞれ独立した方言と見ることができるかもしれません。

スイス

スイスのドイツ手話(DSGS)の起源は定かではありません。ドイツ手話の系統とも考えられますが、フランス手話に近いとも思われます。ウィキペディアのページには、DGSとのつながりについての研究は「計画中」となっています。

イギリス

イギリスでは、イギリスとオーストラリア、ニュージーランド手話(BANZSL)のうちのイギリス手話(BSL)が使われています。これら3つの手話は、「手話の82%が同じ」という大きな共通性があり、1つの手話とみなすことができます。

ウクライナ

ウクライナ手話(USL)はフランス手話の系統です。Mikomaxを訪問した当時、そのチームにはUSLの使い手が数人在籍しており、ポーランド手話者とUSL手話者とのコミュニケーションのために、翻訳機が使われていました。2014年の犯罪ドラマ『ザ・トライブ』は、USLのみでのコミュニケーションが映し出され、国際的に大きな注目を集めました。  


筆者注記:上記の内容は、聴覚障害者の経験についてもっと知りたいと考えている聴者のための情報を提供することを目的としています。筆者自身は聴覚障害者ではなく、上記の内容は専門家の立場からの意見ではないことにご留意ください。この内容は、Mikomax本社で聴覚障害者メンバーについて2部構成で調査した際にまとめたものです。第一の焦点は、ポーランド手話の使い手であるウッチのチームにあり、そこでの視点に注目しています(他の場所の聴覚障害者の経験とは異なる場合があります)。調べているうちに、魅力的な話や非常に有用な情報源があることに気付きました。特にSignHealth、Singapore Association for the Deaf、Ulrike Zeshanがそうです。そうした情報、情報源が読者にも役立つことを願っています。

上記の情報に不完全な部分があることは疑いのないことで、筆者としては情報源として進化していくことを願っています。不正確な情報に気付かれた場合、ここで問われていない疑問についてお知りになりたいことがある場合、あるいは読者に有用と思われる情報をお持ちの場合は、ぜひお知らせください。

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