2021年3月30日 • 所要時間:約4分

本社の再生

未来に向けたオフィスの進化

by Maria Paez Gonzalez

私たちは、歴史上かつてない時代を迎えています。それは、世界の組織や事業体のひとつひとつが働くことの意味を再考することを余儀なくされる時代です。そして、どのように仕事を遂行するのか、誰がそれをやるのか、未来の仕事や労働とはどのような姿になるのかを考える必要に迫られています。 

米国でCOVID-19パンデミックが発生してちょうど1か月が経過したころ、FacebookのCEOであるMark Zuckerbergは本来なら会社のタウンホールミーティングとなるべきコンテンツをストリーミングでライブ配信しました。しかし、ある従業員がその音声を外部に漏らしました。ミーティングは従業員が労働条件について各自の意見を表明した社内アンケートの結果への対応に終始しました。2004年に創業したFacebookの従業員の在宅勤務に対する対応力は、可能性と必要性によって育てられました。アンケートによれば、その時点でFacebookの従業員の95%が在宅勤務をしており、少なくとも半数はオフィスに戻りたいと思っていませんでした。その結果、Zuckerberg氏は、Facebookが「その規模においてリモートワークを最も早く実施した企業」であると豪語しました。

JPMorgan、Capital One、Amazon、Microsoft、Zillowといった大企業は、リモートワークをある程度は採り入れ、移行を進めていました。2020年、これらの企業は在宅勤務ポリシーの拡張を発表し、労働力の一部がリモートワークに対応するよう組織の再構築を進めました。 

カリフォルニア州クパチーノのApple Parkで過ごしたとき、シリコンバレーの背景事情を綿密に調べることになりました。私は、研究者として2018年からこの地で研究を進めていました。ここは、世界で最も革新的な産業の拠点となっています。去年から、将来のオフィスの変化を映し出す一連の傾向が見られます。それは、本社に新たな活力を見出すものです。

オフィススペース:家にはないものを与える場所
中国の例に学んだのは、結局従業員は以前からあるオフィスに回帰することです。しかしながら、パンデミックが収まったときに最も大きな課題となるのが従業員の士気です。各自が決める集中作業の時間配分や自宅の快適さから、オフィスへ来社する毎日に適応するには、時間も、支援も必要です。

パーティションで区切ったオフィスに回帰、はたまた開放的な大空間のオフィスにチャレンジするより、生産的なグループダイナミクスと、その独特の活動の盛衰に合わせた新しいタイプの空間が現れ、発展すべきでしょう。オフィスは自宅にはないものを与え、物理的なワークプレイスと仮想のワークプレイスを統合します。デザインと空間の占有率は、継続的なプロセスになります。それは、アコースティックなど、ワークプレイスにおいて目に見えない側面に大きく依拠するものになります。

ハブ:オフィスではない、サテライトセンター
サテライトオフィスハブは急速に普及しています。GoogleのSundar PichaiやFacebookのタウンホールミーティングから漏洩した音声は、Work from Anywhereのリモート戦略の重要な一部としてのサテライトオフィスハブの力が強調されています。

サテライトオフィスハブとは「関心、利益、活動、重要性の中心」と定義すべき言葉で、現時点では大都市の外にあるオフィススペースを指すために使われます。ハブは新しい概念ではありません。実際、Avery Hartmansは、米国同時多発テロ以降、金融業界がロウアー・マンハッタンから外れた地域にサテライトオフィスを設置している事実に加え、その重要性と応用が拡大していることを指摘しています。

サテライトハブはスタッフ、クライアント、新人研修のいずれにも等しく対応し、社交的な集まりの舞台にもなります。カスタマイズ可能で、自由に構成を変えることができるシーティング、デスクと、従業員の単独作業やグループ作業を支援するテクノロジーが装備されます。

本社:普通の存在から、特別な存在へ
従来の企業の形が空間に分散していく中、新たな機能が台頭してくると予想されます。オフィスに毎日通勤する習慣は過去のものとなり、日常は変化し、本社はつながりとコラボレーションのための場所になるでしょう。本社でこそすべき業務や活動は、そのまま継続され、それ以外のことは、別の場所に移るでしょう。本社のデザインは、個々の機能分野を重視するのではなく、横断的な考え方を採り入れるべきです。しかし、それは現在の本社とどのように異なるのでしょうか?

将来、本社に行くことは、日常的な仕事の中断を意味します。デスクが並んでいるのではなく、人々が集まるための空間になり、スタッフや一般の人々に特別な体験を与える機能を果たすことになります。

オフィスが近い将来に廃れることはないでしょう。それどころか、オフィスでの仕事は高い価値がある仕事のひとつの形として、引き続き認識されると予想されます。ナレッジベースの経済において、価値ある仕事はコミュニケーションにさらに結びついたものになっており、本社が与える特別な時間と空間は、将来における成功に欠かせないインサイトをもたらします。

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